夢の島(フィクション)
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恋仲にあるが、凌(りょう)が有名人であるが故に、いつも会うのは、家。
コンクリートのマンション。
2人でいられることは嬉しいのだが、打ちっぱなしのコンクリートの冷たさにいつも寂しい閉塞感を感じていた……
ある日、奇跡的に休みが取れた凌が突然ギターを背負い、私の手を引き家を出る。
「え、なになに?どこへ行くの?凌だってバレちゃうよ??」
「黙ってついてきて」
桟橋から小さな小舟に乗った。
その間大事そうにギターを抱え、ひと言も言葉を発しない凌を、ただじっと見つめる事しか出来なかった。
「(怒ってるのかな……)」
どれ位の時間波に揺られていたのだろう。
小さな孤島に着いた頃にはもう夕暮れだった。
私達を乗せてくれた小舟は来た道を戻って行った。
「ここどこ?」
「夢の島」
「オレ達しかいない、誰にも邪魔されない、夢の島」
「いつも2人で太陽浴びた事なかったろ?」
それから2人は並んで海を見たり、手を繋いで浜辺を歩いたりした。
初めて2人で太陽がゆっくりと沈むところを見た。
なんてことない事がこんなに幸せだなんて……
夢のようだった。
この幸せがずっと続けばいいのに。
太陽が地平線に沈み、夜が訪れる。
拾った流木に火を灯し、夜になってもたくさんたくさん話をした。
いつも多忙な凌だから…他愛もない話を聞けるだけで、ただただ幸せだった。
いつも早口の凌も、 ここではゆっくりと時間をかけて大事そうに言葉を紡いでいた。
優しい凌の声。
ふと、凌が持ってきたギターの蓋を開ける。
「こんな所までギター持ってくるなんて、本当に仕事好きなんだから」
冗談っぽく言う私の唇に凌はそっと人差し指を当てる。
「今日はお前だけの為に歌を歌いたくて」
「!!!!」
いつも何万人の前で歌っている凌が、私だけの為にギター1本で歌ってくれるの?
サンセットを並んで見られただけでも充分幸せなのに、こんなに幸せなことってある?
「何が聴きたい?」
「でも…1曲だけだぞ」
いたずらっぽく言う凌が愛おしい。
〜続く〜
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さぁ。何の曲をリクエストしますか?
written by ERI